日時:4月27日(金) 16:00〜18:00
場所:東京大学生産技術研究所 D棟 Dw601

講師:本間 研一 先生 (北海道大学大学院医学研究科)

タイトル:生物時計−階層的多振動体システム

アブストラクト:
 行動やホルモン分泌など、多くの生理機能にみられる概日(約24時間)リズム
は、生物が昼夜変化や季節変動に適応する過程で進化した機能であり、その機構
を生物時計という。24時間リズムは細胞内で発振されるが、リズムを発振してい
る細胞は生体のほとんどすべての組織に認められ、生物時計は階層的多振動体シ
ステムからなることが想定されている。ほ乳類では、明暗サイクルに同調する中
枢振動体が視床下部視交叉上核に存在し、種々の生理機能にみられる概日リズム
の発現に直接関与する振動体が末梢組織に存在する(末梢振動体)。中枢振動体
からの振動シグナルが末梢振動体の位相を調節していると考えられるが、末梢か
ら中枢振動体へのフィードバックも想定されている。
 視交叉上核にある中枢振動体も多数の振動細胞から構成されている。個々の振
動細胞の周期は必ずしも同一ではないが、細胞群では単一の概日周期を示す。視
交叉上核は組織学区的に大きく2つの領域に別れ、それぞれに異なる振動機構が
存在するが、さらに視交叉上核の前方と後方では振動機能が異なる。従って、中
枢振動体もまた階層的多振動体システムからなる。この様に複雑な構造をもつ生
物時計が、昼夜変化や季節変動に対応し、生体機能の最適化を実現しているが、
振動細胞内、あるいは細胞間のリズム伝達、サブ振動機構の役割、中枢振動体と
末梢振動体のコミュニケーションメカニズムについては、研究は始まったばかり
である。